QMSが確立しているとはどういう状態か

QMS

以前の記事でQMSとは「利害関係者の要求・期待を実現する仕事のやり方」であることを説明しました。では、「QMSが確立している」とはどういう状態であるか考えてみましょう。

以前のでQMSは「利害関係者」「要求・期待」「体系的な運営」「要求・期待を満たす製品・サービス」のつながりであることを示しました。すなわち、各々の箱の中身が明確になっていることが「QMSが確立した状態」となります。
では、それぞれの中身について見ていきましょう。

利害関係者

利害関係者の定義はISO 9000(用語解説) 3.2.3にあるように「組織の活動に影響を受ける組織」です。別の言い方をすると、組織の活動のアウトプットを評価する組織のことです。

ISO 9001のinterested partiesをJIS 9001では、利害関係者と訳しています。「利害関係者」Googleで翻訳するとstakeholdersとなり、interested partiesに戻りません。interested partiesをGoogleで翻訳してみると、利害関係者になります。
interestedには「利子」という意味で、stakeは「掛金」という意味ですので、interested partiesとstakeholdersの日本語的な意味は
・interested parties :影響受ける組織(影響には良い影響と悪い影響がある)
・stakeholders :出資者(銀行・投資家)
という感じで、interested partiesの中にstakeholdersが含まれるようです。
ISO 9000(用語解説)では、interested partiesとstakeholdersは区別していないので、それほどこだわることもないのでしょうが、個人的にはISO 9001にinterested parties使った理由を知りたいところです。

この後解説予定の品質運営(保証)体系図で自組織とつながっている組織が利害関係者ですが、品質運営体系図を作るまえに、一度自分たちの仕事で影響を与える外部組織を洗い出してみてください。
QMSが確立しているということは、利害関係者が明確になっていることが、必要条件になります。

ISO 9000(用語解説)では、利害関係者の例として、お客さま・株主・従業員・サプライヤー・法規制・労働組合・協業先があげられています。確かに利害関係者ではあるのですが、文書の中にどこまで取り込むかはよく考えたほうがいいです。
例えば、従業員を利害関係者として明記すると、認証審査の際に「従業員の要望はどのように収集し、それにどのように対応していますか?」と聞かれると面倒です。文書化していなくとも、経営として当たり前であれば、あえて文書には書かないというのも現実的な対応としてありです。

要求・期待

ここはビジネスが目指す方向、数値目標です。
利害関係者の「要求」は一般的には文字になっているのでわかりやすいと思います。
期待はJIS 9001では「明示してはいないが」(8.2.3.1)となっており、ここが難しいところです。B To Bのビジネスであれば、お客さまとの会話の中から引き出すこともできるのですが、B To Cになるとアンケートを取ったところで鵜呑みにするわけにはいかないです。
どんなビジネスモデルであろうと、ここは
・関係者で議論して決める(日本風)
・戦略に責任を持つ人(々)が責任を持って決める(欧米風)
のいずれかだと思います。

期待・要求が間違っていると、その後の体系的な運営が無意味になるので、非常に重要なところです。

体系的な運営

要求・期待を実現する道筋が明確になっているかどうかです。ここを見て「なるほど。これならいい製品・サービスが出てくるよね。」と思えるようになっていればOKです。
悪い例は、迷路のようになっていて、「どうやって要求・期待を満足したものができるのだろう?」と感じてしまいます。
体系的になっていないのに、いい製品・サービスができている場合は要注意です。その場合は、たまたま運よくいいものができているだけか、特定の個人(全体を見渡せるスーパーマン)の頑張りでできているだけの可能性が高いです。(←日本企業に多い)

ここまでQMSを構成する4つの要素について見てきましたが、実はそれだけではQMSが確立しているとは言えません。
あと2つありますので、それについて見ていきます。

評価

要求・期待をどの程度満足しているかを、評価しなければなりません。ここは、お客さまのクレームが少ないとかだけでなく、利益は出ているかとか、従業員の定着度はどうかとか、サプライヤーの満足度はどうかとかいう全ての利害関係者目線で評価する必要があります。

当然、期待・要求のところの数値目標と一対になっているべきですが、現実的には運営しながら評価指標を決めるのもありだと思います。

見直し

評価をして、満足したものになっていなければ、とうぜん仕事のやり方を見直す必要があります。見直す頻度は、大きなクレームがなければ、半年に1回とか年に1回でしょうか。
とても目標を達成できないとか、そんな目標はよく考えたら利害関係者は気にしていないということであれば、目標を見直すのもありです。
ただ、目標の見直しは戦略の見直しになることも多いので、組織のトップが判断することが多いようです。

まとめ

QMSが確立してるとは、「利害関係者の要求を満足する製品・サービスを作り続けるために、継続的に仕事のやり方を見直している状態」と言えます。
まとめてみると、QMSなんて言葉で表現するまでもなく、仕事をやっていくには当たり前のことなんですが・・・。

今回の記事をにするとこんな感じです。

QMS事務局の駆け込み寺 – IATF16949/ISO9001 サブスクアドバイザー

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